コレクションには“フジタ”が生きている
シャーマンは、日本文化への強い憧憬をもち、アートやデザインの実作者としての素養をもっていましたが、コレクション収集には、藤田嗣治のセンスと鑑識眼が、大きな役割をもったとシャーマン自ら語っています。
「フジタは、日本人としての誇りをもつ人生をいとおしみ、私に、自分らしく楽しく生きることを教えてくれました。私がフジタから学んだのは、言葉を通してだけではありません。フジタの感情、身振り、自然への反応の仕方から、私はフジタのすべてを吸収しようとしました。」(シャーマン談)
シャーマンは週のうち何度も、フジタと連れ立って、街を歩き回わったり展覧会に出かけたりしました。フジタは常人とは違う好奇心や着眼点をもち、また飛び抜けて鋭い観察力を持っていました。例えば、大工さんなどの職人が何かを作っていると、いつも感激してじっと観察していることがありました。フジタは職人気質や、伝統的な造形に心から敬意をもち、それを自分の創造のなかに活かそうとしていました。そうした物づくりや伝統文化への姿勢を、シャーマンは少しでも自分のものにしてみたいと思いました。「フジタと長い時を過ごしたことによって、すべてのものが今までとは違う目で見られるようになりました」とシャーマンは語っています。
シャーマンは、絵画などの美術品だけでなく、印刷物、写真集、生活用具、マッチのラベルまで、日本文化が生み出したあらゆるジャンルの美しい物品を集めました。
古本屋街などを何時間も歩きまわり、心が強く引かれるものだけを集めているうちにコレクションはいつの間にかぼう大な量になりました。集めるうちに、「ひとつひとつには文化があり、歴史があるので、整理して保管していかなければならない」という使命感が生まれました。