世界でも稀少な銅版画原版がシャーマンコレクションからよみがえります。
藤田はアトリエに何匹もの猫を飼っていたほどの愛 猫家で、戦前のパリ時代から女性を描いた作品に 繰り返し猫を登場させています。のちには、猫のさま ざまな姿態を単独で何度も描くようになりました。 この「猫」は終戦直後に描かれたもので、屈託なく眠 る猫のポーズが、鬱屈した気分から解放された画家 の心境をそのまま伝えてくれます。この図は油彩画 にも描かれており、初めてアトリエを訪れたフランク・ シャーマンに贈られました。 本版画では、猫の毛並みの豊かで変化に富んだ質 感を、細かく入念に線を重ねて表現しようとしていま す。愛らしさとともに、猫の迫力ある存在感が見るも のに迫ります。